「南極」という言葉は知っていても、そこがどれだけ過酷な環境かを知っている人は少ないんじゃないでしょうか。
南極には、夏は24時間太陽が沈まない極昼(きょくちゅう)、逆に冬は一切昇らない極夜(きょくや)があります。私たちは普段、太陽の高さや位置から、時間や方角をなんとなく感じ取っていますが、南極では「それ」ができません。加えて氷点下数十度、さらに視覚から得る情報も、真っ白、または真っ黒。こんな環境では人間の感覚はあてになりません。
かつて南極を探検した冒険家たちも、この極限状態で時間の感覚を失い、判断力を奪われていきました。
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リチャード・E・バードが記録した“時間の喪失”

1934年、元アメリカ海軍だった探検家・リチャード・E・バードは南極で単独越冬という前例のない任務に挑みました。
観測のため基地から160km以上離れた小屋で半年間生活を行いながら、極限環境下での人間の限界を日誌に淡々と記録していました。
・時間感覚の喪失
・環境による判断力の低下
・精神的な不安定さ
・これらによる判断ミス
・体調悪化
南極では、“自分の感覚”すら信用できなくなる。
だからこそ必要だったのが、自分の外側にある「客観的な時間の基準」でした。
「探検」から「任務」へ変わった南極

1955年、アメリカ海軍は「Operation Deep Freeze」という2026年現在も続くプロジェクトを始動。指揮を執ったのは、あのリチャード・E・バード提督です。
プロジェクトの内容は、氷上に滑走路を建設、物資の空輸、観測拠点の維持という、南極での物流や運用を支えるための「任務」でした。
南極では、何時に行動するか。どれだけ作業したか。いつ戻るか。どの方向に移動しているか。どのぐらい移動したか。すべてが時間に依存します。時間を誤ればそのまま遭難に繋がり、まさに生死を分けてしまうわけです。
彼らが極地で必要とした道具の条件は、
・氷点下40度を下回っても止まらない
・時間が狂わない
・衝撃、磁気、湿度。どれにも屈しない。
・極夜の暗闇でも文字盤が読める
つまり、“機能すること”そのものでした。
Nivadaの挑戦

Nivadaは、この過酷な任務に耐えうる設計を施した「Aquamatic」を開発。実際にOperation Deep Freezeの隊員たちに着用されたこのモデルは、マイナス40度を下回る気温や過酷な環境下でも正常に作動し続け、この実績から新たに「Antarctic」と名付けシリーズを拡大。当時の広告では、「氷の中に閉じ込められても、極寒の海に沈められても動き続ける」というタフさが打ち出され、当時の一般消費者に対しても「世界で最も過酷な場所で認められた時計」として強い信頼を与えました。

その後、Nivadaは1970年代のクォーツショックの荒波に呑まれ、一度は表舞台から姿を消します。
しかし2020年代、復活を遂げたNivadaは、70年近く前に極寒と闇のなかで時を刻み続けた遺産を復刻。時計愛好家の間でも高く評価されています。
※本記事は、HºM'S" WatchStore バイヤーチームによる読みものコンテンツです。
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