2026.01.20 Update.

Pick up Watch - 1977年の異端児が、再び主役へ Nivada Grenchen(ニバダ・グレンヒェン) F77 - インテグレーテッドスポーツウォッチという選択

1970年代に生まれた腕時計が、
2020年代の今、あらためて「ちょうどいい」と感じられることがある。
それは懐かしさでも、単なる流行でもありません。

むしろ、いまの腕時計市場が少し行き過ぎてしまったからこそ、
静かに、しかし確実に刺さってくる存在なのかもしれません。

その代表例が、Nivada Grenchen(ニバダ・グレンヒェン) F77 です。
1977年に登場したこのインテグレーテッドスポーツウォッチは、
当時は決して主役ではありませんでした。
しかし今、行列や投機とは無縁の場所で、
「本当に使える70年代デザインとは何か」を
もっとも誠実に示す時計として再評価されています。

F77という存在

インテグレーテッドスポーツの原点にして、異端

F77が初めて登場したのは1977年。
インテグレーテッドスポーツウォッチ黎明期において、
Nivada Grenchenが提示したひとつの答えでした。

・ファセットを効かせたケース
・八角形ベゼル
・ケースと一体化したブレスレット

一見すると、70年代らしい記号の集合体。
しかしF77は、単なる流行の追従ではありません。

丸い文字盤 × 八角形ベゼル × 円形の外周ライン。
この“形のぶつかり合い”が生む独特の緊張感こそ、
F77が今見ても新鮮に映る理由です。

F77という存在

ヴィンテージの顔に、現代の中身

見た目は過去、性能は現在

F77は、外観だけを再現した“雰囲気重視の復刻”ではありません。
むしろこの時計の本質は、
70年代のデザインを、現代の生活で無理なく使うために、
中身を徹底的にアップデートしている点にあります。

まず風防には、サファイアクリスタルを採用。
当時のアクリル風防が持っていた柔らかな表情は尊重しつつ、
傷に強く、日常使いで気を遣わなくていい実用性を優先しています。

防水性能は100m防水。
インテグレーテッドスポーツウォッチとして、
水回りを過度に意識せず使える安心感は、
現代では“特別な性能”ではなく、前提条件です。

さらに、スクリューダウンリューズとソリッドケースバック。
これは数値以上に、
「この時計は、日常で使われることを前提にしている」
という、ブランドからの明確なメッセージでもあります。

ヴィンテージの顔に、現代の中身

心臓部に宿るのは、「使い続けるための現実解」

F77シリーズに搭載されるムーブメントは、
モデルによって異なります。

MK1・MK2には、
SOPROD P024 自動巻きムーブメントを。

MK2 Chrono Mecaquartzには、
SEIKO VK64 メカクォーツムーブメントを採用しています。

一見すると、
「機械式とクォーツで思想が違うのでは?」
と感じるかもしれません。

しかし実際には、
どちらもF77という時計の考え方に、非常に忠実な選択です。

SOPROD P024は、
約38時間のパワーリザーブを持つスイス製自動巻きムーブメント。
決してスペック競争を意識した存在ではありません。

・高精度を過剰に追い求めない
・特殊構造に走らない
・整備性と信頼性を優先する

いわば、
「長く付き合うこと」を前提に設計された機械です。

毎日着けてもいい。
数日外しても、また気軽に戻れる。
将来的なメンテナンスも現実的。

F77が自動巻きに求めたのは、
所有すること自体が負担にならない、
ちょうどいい機械式でした。

一方、MK2 Chrono Mecaquartzに搭載される
SEIKO VK64は、
クォーツの正確さと、
機械式クロノグラフの操作感を併せ持つハイブリッドムーブメントです。

・時刻表示はクォーツ制御で高精度
・クロノグラフは機械式モジュール
・中央クロノ秒針はスイープ
・プッシャー操作は明確で心地よい

ここでもF77の判断は明確です。

クロノグラフという複雑機構を、
日常でストレスなく使うための最適解として、
メカクォーツを選んでいる。

精度、操作感、電池寿命、メンテナンス性。
そのバランスを考えれば、
VK64は非常に理にかなった選択だと言えます。

F77がムーブメントに求めたのは、
「語れるスペック」ではありません。

着ける人の生活を邪魔しないこと。
そして、長く使い続けられること。

機械式であっても、
クォーツであっても、
その基準は一切ブレていません。

F77が選んだのは、
スペック競争ではなく、
所有したあとにストレスが残らない“心臓部”だったのです。

心臓部に宿るのは、「使い続けるための現実解」

ヴィンテージを、日常に持ち込むという設計

70年代デザインの時計を、
現代に持ち込むときに起こりがちなのが、

「見た目はいいが、使いづらい」
「気を遣いすぎて結局着けなくなる」

というズレです。

F77は、そのズレを最初から想定し、
外観は過去に、性能は現在に置いた。

だからこそこの時計は、
“ヴィンテージ風”で終わらず、
いまの生活の中に自然に入り込むのだと思います。

ヴィンテージを、日常に持ち込むという設計

再評価は偶然ではない

F77が「今」刺さる理由

Nivada Grenchen F77の再登場は、
決して懐古趣味や一時的なブームによるものではありません。
その反響は静かでしたが、確かに強く、
最初の復刻モデルは短期間で完売という結果を残しました。

ここで重要なのは、
「なぜ、F77だったのか」という点です。

インテグレーテッドブレスレットを備えた
いわゆる“スポーツシック”な腕時計は、
ここ数年で再び大きな注目を集めています。

しかし同時に、
そのジャンルは大きな歪みも抱えるようになりました。

まず、価格の問題。
かつては「デザインと実用性のバランス」で語られていた時計が、
今では定価とかけ離れた実勢価格で取引され、
欲しいと思っても、現実的な選択肢になりにくい。

次に、入手性の問題。
正規店では順番待ちが常態化し、
時計そのものよりも
「いつ買えるのか」「買える資格があるのか」
といった話題が先行する。

そして最後に、語られ方の変化。
本来は腕に着けて使う道具であるはずの時計が、
いつの間にか
資産性や希少性といった文脈で消費される存在になっていった。

F77は、
その流れとは明確に距離を取った場所に現れました。

1977年という明確な起点を持ち、
当時実在したモデルをベースにしていること。
インテグレーテッドスポーツという文脈に
正しく属していること。
そして何より、
デザイン・品質・価格のバランスが、現実的であること。

F77は、
過去の名作を神話化することもなく、
現代の市場に迎合することもない。

あくまで
「このデザインは、なぜ生まれたのか」
という問いに正面から向き合い、
それを今の技術で誠実に再構築しています。

だからこそF77は、
「代替品」としてではなく、
ひとつの“答え”として選ばれているのだと思います。

高騰する市場への反発でも、
入手しやすさだけが理由でもない。

腕時計を“道具として、もう一度正しく楽しみたい”
そう考える人たちの感覚に、
F77は静かに、しかし確実に重なった。

それが、
F77の再評価が偶然ではない理由です。

再評価は偶然ではない

サイズ感と“普通に使える”という再評価軸

37〜38mmというF77のサイズは、
数年前までは「やや小ぶり」と捉えられることもありました。
存在感のある大型ケースが主流だった時代においては、
控えめに映ったのも事実です。

しかし今、このサイズ感は
単なる“好み”ではなく、明確な理由を持って再評価されています。

まず、身体感覚の変化です。

長時間腕に着けていても疲れにくい。
PC作業やデスクワークの邪魔にならない。
シャツの袖口に自然に収まり、
無意識の動作を妨げない。

これはスペック表では測れない、
生活の中で積み重なる快適さです。

F77の37〜38mmというサイズは、
この“何も起こらない快適さ”を
最優先に考えた結果とも言えます。

次に、スタイルとの相性。

F77はスーツにも、
休日のカジュアルにも自然に馴染みます。
それは決して
「主張しないから」ではありません。

ケースとブレスレットが一体化した
インテグレーテッドスポーツという構造は、
そもそもボリュームで語るデザインではないからです。

八角形ベゼルのエッジ、
ケースのファセット、
ブレスレットとの連続性。

これらは、
サイズを拡大することで強調される要素ではなく、
適切なスケールでこそ成立する造形です。

F77は、
大きくして迫力を出す時計ではなく、
バランスで存在感を生む時計なのです。

そしてもうひとつ、
見逃せないのが年齢との関係です。

30代後半から50代にかけて、
腕時計に求めるものは少しずつ変わっていきます。

・若い頃のような誇示は要らない
・だが、安っぽくは見せたくない
・自然体で、それなりに“分かっている”印象が欲しい

F77のサイズ感は、
まさにその感覚と重なります。

主張しすぎず、
しかし埋もれない。
控えめなのに、
どこか芯がある。

このバランスこそが、
「年齢を重ねても違和感がない」
と感じさせる理由です。

さらに重要なのは、
このサイズが1977年当時の文脈とも一致している点。

F77は、
現代の流行に合わせて小さくした時計ではありません。
もともと、このサイズで設計されたデザインです。

だからこそ、
無理がない。
後付けの調整感がない。

当時の合理性が、今になって再び意味を持った。
それが、F77のサイズ感に対する再評価の本質だと思います。

37〜38mmという数字は、
決して派手ではありません。

しかしF77は、
その数字の中に
快適さ、汎用性、品の良さ、
そして時間と共に変わらない価値を
きちんと詰め込んでいます。

それこそが、
このサイズが
「普通に使える」という言葉で片づけられない理由なのです。

サイズ感と“普通に使える”という再評価軸

F77という器の広さ

1977年に描かれたF77の設計は、
単なる「当時の流行」をなぞったものではありませんでした。

だからこそF77は、
・素材を変えても
・仕上げを変えても
・ムーブメントを変えても

破綻しない。

MK1、MK2、MK2 Chrono Mecaquartz。
それぞれが異なる方向性を持ちながら、
すべてが「F77」として成立している理由を、
モデル別に見ていきます。

F77という器の広さ

F77 MK1

1977年のF77を、もっとも正直に受け継いだベースライン

1977年のF77を、もっとも正直に受け継いだベースライン

F77 MK1は、
オリジナル1977年モデルの空気感を、
最も純度高く残した存在です。

ケース径は37mm。
インテグレーテッドブレスレット特有の一体感を保ちつつ、
現代の腕にも無理なく収まるサイズ感。

特徴的なのは、
MK1が素材表現を積極的に受け入れている点です。

ステンレススチールを軸に、
チタニウム、セラミックといったケース素材を展開。

さらに文字盤には、

・ラピスラズリ
・アベンチュリン
・メテオライト
・スモークダイヤル

といった、
1970年代らしい“素材で語る贅沢”が用意されています。

これは単なるバリエーションではありません。

形が完成しているからこそ、素材で遊べる。
MK1は、F77というデザインの強度を
もっとも分かりやすく体現したモデルだと言えます。

デザインを“味わう”ための着用感

デザインを“味わう”ための着用感

MK1を腕に乗せると、
まず感じるのは造形の存在感です。

ケースの厚みやエッジの立ち方、
バスケットウィーブダイヤルの情報量。
それらが一体となって、
「これは1977年のデザインだ」と
静かに主張してきます。

決して重すぎるわけではありませんが、
MK2と比べると、
時計を着けている感覚はやや明確です。

・週末
・オフの日
・時計を意識して楽しみたい日

そんなシーンで、
腕元を見るたびに満足感が返ってくる。
MK1は、F77の造形そのものを楽しむための着用感だと言えます。

F77 MK2

F77を「日常で使う時計」として完成させた進化形

F77を「日常で使う時計」として完成させた進化形

MK2は、
一見するとMK1と大きく変わらないように見えます。

しかし実際には、
着けた瞬間に違いが分かるアップデートが施されています。

ケース厚は約12.2mmへとスリム化。
ブレスレット構造も見直され、
より自然に腕へ沿うフィット感を実現。

針はドーフィン型へ変更され、
ダイヤル全体の印象も引き締まりました。

MK2で象徴的なのが、
オニキスダイヤルの存在です。

装飾性を抑えた深い黒は、
F77の八角形ベゼルやケースラインを
より明確に浮かび上がらせます。

加えて、MK2では
メテオライト、カーボン系ダイヤル
といった選択肢も用意され、

クラシックからモダンまで、
F77の表情を
自分の距離感で選べる構成になっています。

MK2は、
F77を“眺める時計”から
“付き合う時計”へ引き寄せたモデル
と言えるでしょう。

“何も起こらない快適さ”を突き詰めた着用感

何も起こらない快適さ”を突き詰めた着用感

MK2を着けた瞬間に感じるのは、
とにかく自然であることです。

ケースのスリム化、
ブレスレット構造の見直し、
フィット感の向上。

それらが積み重なって、
腕に乗せた直後から
「ずっと着けていたかのような感覚」を生み出します。

デスクワーク中も、
移動中も、
時計の存在を意識する場面がほとんどありません。

これは、
F77を“道具として完成させる”方向に振り切った結果です。

毎日着ける。
服装を選ばない。
シーンを選ばない。

MK2の着用感は、
F77を生活の一部に溶け込ませるためのものだと言えるでしょう。

F77 MK2 Chrono Mecaquartz

存在しなかったF77の未来を、現代的に描いた一本

存在しなかったF77の未来を、現代的に描いた一本

MK2 Chrono Mecaquartzは、
他のF77とは明確に立ち位置が異なります。

なぜなら、
1977年当時、F77にクロノグラフは存在しなかったからです。

つまりこれは復刻ではなく、
F77のデザインを使った“完全な新作”。

搭載されるのは、
SEIKO VK64 メカクォーツムーブメント。

・時刻表示はクォーツ制御で高精度
・クロノグラフは機械式モジュール
・中央クロノ秒針はスイープ
・プッシャー操作は明確で心地よい

「クロノは好きだが、毎日は使わない」。
そんな現代的な感覚に、
非常に合理的な選択です。

ダイヤルには、
ウーブン調のカーボンパターンを採用。

スポーティでありながら、
F77特有の品の良さは失われていません。

このモデルは、
F77が単なるヴィンテージ再解釈ではなく、
現在進行形のコレクションであることを
はっきりと示しています。

機能を載せても、バランスを崩さない着用感

機能を載せても、バランスを崩さない着用感

クロノグラフを搭載すると、
一般的には
・重くなる
・厚くなる
・主張が強くなる

そう思われがちです。

しかしF77 MK2 Chrono Mecaquartzは、
その予想を良い意味で裏切ります。

メカクォーツという選択により、
クロノグラフでありながら
重量増や厚みのストレスは最小限。

腕に乗せた印象は、
「クロノだから特別」ではなく、
「F77に機能が自然に加わった」という感覚です。

・オン/オフ兼用
・平日は仕事、週末はアクティブに
・時計に少し遊び心が欲しい

そんな人にとって、
Chronoは一番表情の幅が広いF77かもしれません。

モデル別に見えてくる、F77の本質

MK1
1977年の空気と素材表現を楽しみたい人へ

MK2
F77を日常で、長く使いたい人へ

MK2 Chrono Mecaquartz
F77を現代的なスポーツウォッチとして楽しみたい人へ

どれが優れている、ではありません。

どの時間を、このデザインと過ごしたいか。
F77は、その問いに
モデルという形で答えてくれるシリーズです。

モデル別に見えてくる、F77の本質

着用感の違いが示す、F77というシリーズの成熟

MK1、MK2、Chrono。
どれもサイズは近く、
どれも同じデザイン言語を持っています。

それでも着用感が違うのは、
Nivada Grenchenが
F77を単なる復刻モデルの派生としてではなく、
使われ方まで設計されたシリーズとして捉えているからです。

MK1:時計を“楽しむ時間”のための一本
MK2:時計を“忘れられるほど使う”ための一本
Chrono:時計で“日常に変化をつける”ための一本

どれが正解、ではありません。

どんな時間を、腕元と過ごしたいか。
F77は、その問いに
着用感というかたちで答えてくれるシリーズなのです。

F77を選ぶということ

1977年を、これからの時間で使う

F77は、
誰にでも分かりやすい“ステータスウォッチ”ではありません。

しかし、
知れば知るほど、
なぜこの形なのかが腑に落ちてくる時計です。

・70年代の空気
・現代の技術
・無理のない価格と実用性

そのすべてが、
驚くほど自然に同居している。

F77とは、
過去を飾るための時計ではなく、
過去を今の時間で使い切るための時計。

それこそが、
Nivada Grenchen F77が
再び選ばれている理由なのだと思います。

※本記事は、HºM'S" WatchStore バイヤーチームによる読みものコンテンツです。
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