こんにちは、エイチエムエスウォッチストア編集部です。
腕時計の価値は、外装の美しさだけで決まりません。
その時計が“どういう思想で動いているか”を決めるのがムーブメント。
ここでは、Hº M’S WatchStoreで扱う代表的なムーブメントメーカーを、歴史と技術の視点で紹介します。
目次
日本|量産技術で「信頼性」を作り込む
SEIKO(セイコー)
量産技術によって「実用時計の完成度」を世界基準まで引き上げた、日本のムーブメント思想の中核。

SEIKOは、日本の時計産業を“世界基準”へと引き上げたブランドであり、機械式時計においても 「実用品としてどこまで完成度を高められるか」を追求し続けてきたメーカーです。
スイス時計が“職人の文化”から発展してきたのに対し、SEIKOは工業製品としての時計を徹底的に磨き上げてきた存在。
大量生産でありながら、精度・耐久性・品質のブレを最小限に抑える製造技術は、現在の世界中の時計メーカーの“基準そのもの”になっています。
その思想は、外販用ムーブメントを担うTMI(Time Module Inc.)=セイコーグループの純正ムーブメント供給会社 によって、世界中のマイクロブランドへと受け継がれています。
つまり NH系・NE系は、「セイコー純正設計のエンジン」。
名前こそSEIKO表記ではありませんが、設計・品質基準・長期供給体制は、完全にセイコーの哲学の上にあります。
どんな時計に使われるか
マイクロブランドからプロユース志向の実用時計まで、「毎日安心して使う時計」に最も多く採用されます。
MIYOTA(ミヨタ)
薄さ・精度・現代性を量産品質で成立させる、日本製ムーブメントの進化系。

MIYOTAは、シチズン時計グループが展開するムーブメントメーカーとして、世界中のブランドに“現実的な高精度”を供給し続けてきた日本の名門メーカーです。
SEIKOが「実用時計の完成度」を突き詰めてきた存在だとすれば、MIYOTAは “精度と薄さ、そして現代的な機構を量産品質で成立させる”ことを磨いてきたメーカー。
特に9000系に代表される薄型高精度ムーブメントは、マイクロブランドから高級ラインまで幅広く採用され、「日本製ムーブメント=薄くて正確」という評価を世界に定着させました。
また、近年登場した9075(GMT)は、現代のライフスタイルに即した“旅する人のための機構”として高い評価を受け、MIYOTAがいまも進化を続けるムーブメントメーカーであることを象徴しています。
実用性と現代性を両立した日本製ムーブメントのもう一つの柱。
それが MIYOTA です。
どんな時計に使われるか
薄型ケースや現代的デザインの時計、GMTなど多機能を日常使いしたいモデルに多く採用されます。
スイス|規格・互換性・仕上げの文化圏
SELLITA(セリタ)
現代スイス機械式時計の「標準」を担う、事実上のインフラ的ムーブメントメーカー。

SELLITAは、現代スイス機械式時計を支える“事実上のスタンダードムーブメントメーカー”とも言える存在です。
ETAの供給制限をきっかけに急成長し、現在では数多くのスイスブランドの心臓部を担う中心的なメーカーとなりました。
特徴は、構造の完成度・供給の安定性・整備性の高さ。
ムーブメントを単なる「部品」ではなく、長く使われることを前提とした“インフラ”として設計している点にあります。
SW200などの代表キャリバーは、現代スイス機械式時計における“基準”として広く採用され、SELLITAは今や「スイス製であることの安心感」を形にしているメーカーと言える存在です。
どんな時計に使われるか
復刻モデル、定番自動巻、初めてのスイス機械式時計など、幅広い実用時計に採用されます。
ETA(エタ)
スイス時計産業そのものを設計してきた、すべての基準点となる存在。

ETAは、スイス機械式ムーブメントの歴史そのものとも言える存在。
現在のスイス時計産業の設計思想・規格・構造の多くは、このETAのムーブメントを基準に築かれてきました。
かつては世界中のスイスブランドへムーブメントを供給し、「スイス機械式時計の標準」を定義したメーカー。
2824やValjouxなどの名キャリバーは、いまもなお数多くのムーブメント設計の“原点”として語り継がれています。
ETAは単なるムーブメントメーカーではなく、スイス時計が“産業として成立する土台”を作った存在。
SELLITAをはじめとする現代メーカーの設計思想にも、そのDNAは深く息づいています。
どんな時計に使われるか
ヴィンテージ文脈の時計や、設計思想の“原点”を重視するブランドに多く見られます。
La Joux-Perret(ラ・ジュー・ペレ)
伝統設計を土台に、現代的な実用性能へ進化させたハイグレードムーブメント。

La Joux-Perret は、スイスの伝統的な時計づくりを土台に、“現代の使いやすさ”を徹底的に磨き上げたハイグレードムーブメントメーカーです。
高級ブランド向けのムーブメント開発を数多く手がけてきた背景を持ち、精度・耐久性・実用性のバランスに優れた設計は、「復刻デザイン × 現代品質」という時計と非常に相性が良い存在。
近年注目されている G100 に代表されるキャリバーは、長時間パワーリザーブと安定した精度を両立し、“次世代のスイススタンダード”とも言われる存在になりつつあります。
伝統と革新、そのどちらも手放さない。
La Joux-Perret は、現代スイスの進化系ムーブメントを象徴するメーカーです。
どんな時計に使われるか
復刻デザイン×現代品質を求める中〜上位価格帯の実用時計に多く採用されます。
SOPROD(ソプロード)
派手さよりも「安心して長く使えること」を最優先した、堅実派スイスムーブメント。

SOPROD は、スイスのムーブメントメーカーの中でも“派手さよりも実用性と信頼性を徹底して磨いてきた存在”として知られています。
精度や耐久性、整備性といった“日常で使うための完成度”を重視した設計は、復刻モデルやヴィンテージテイストの時計と非常に相性が良く、「雰囲気はクラシック、中身は現代品質」という文脈で選ばれることの多いメーカーです。
P024 や P054 に代表されるムーブメントは、堅牢でクセがなく、長く安心して使えるスイス製自動巻の定番格。
SOPRODは、“安心して毎日使えるスイス機械式”を支える、まさに縁の下の力持ちのような存在です。
どんな時計に使われるか
ヴィンテージテイストやクラシックデザインの、日常使い前提の機械式時計に適しています。
Landeron(ランデロン)
クロノグラフ黄金期の系譜を、現代品質で受け継ぐ復活系ムーブメントメーカー。

Landeron は、かつてクロノグラフ黄金期を支えた名門ムーブメントメーカーの系譜を受け継ぐ存在。
ヴィンテージクロノの世界では、その名は“ひとつの時代”を象徴する存在として語られてきました。
現代に復活した Landeron は、当時の空気感を大切にしながら、現代の品質基準で再構築されたクロノグラフムーブメントを展開。
「ヴィンテージクロノのテイストを、安心して楽しめる」ためのエンジンとして、マイクロブランドを中心に高い評価を受けています。
歴史とロマン、そして実用性。
Landeron は、クロノグラフの物語を今に繋ぐ存在です。
どんな時計に使われるか
ヴィンテージクロノの雰囲気を、現代の信頼性で楽しみたいクロノグラフモデルに採用されます。
中国|いま世界が注目する“第3のムーブメント勢力”
Seagull (シーガル)
クロノグラフの構造美を、現実的な価格帯で成立させた中国最大級メーカー。
Seagull は、中国最大級のムーブメントメーカーであり、現在では世界有数の生産規模を誇る存在です。
その名を一躍有名にしたのが、スイス名門 Venus の設計を正式に受け継いだ手巻きクロノグラフ「ST1901」ムーブメント。
本来は高級機に使われるコラムホイール式クロノグラフ構造を持ちながら、現代では現実的な価格帯で楽しめる点が大きな魅力で、“ヴィンテージクロノの構造美を、今の時代に楽しめる”存在として高い評価を得ています。
Seagull は、スイスと日本だけだったムーブメント市場に新しい選択肢をもたらした、まさに“第3勢力”を象徴するメーカーです。
どんな時計に使われるか
手巻きクロノグラフや、構造を楽しむモデルで「価格と機構」を重視した時計に使われます。
Hangzhou(杭州)
複雑機構の量産化で、新しい高級時計の可能性を切り拓く中国メーカー。
Hangzhou は、中国で高精度ムーブメントを専門に開発する実力派メーカー。
とくに複雑機構の量産化において高い技術力を持ち、近年はスイスや日本とは異なる文脈で評価を高めています。
フライングトゥールビヨンなどの複雑機構を、現実的な価格帯で量産できる技術力は、“新しい高級時計のかたち”として世界中のマイクロブランドから注目される存在。
近年ではシンプルな自動巻ムーブメントの品質も大きく向上し、アヴァンギャルドなデザインや実験的なモデルの“心臓部”として、新しい選択肢を提示するメーカーになりつつあります。
どんな時計に使われるか
トゥールビヨンなど実験的・アヴァンギャルドなデザインの時計に採用されることが多いです。
“内製”という哲学。マニュファクチュールムーブメント
Manufacture(マニュファクチュール)
ブランドの思想を、ムーブメントそのものに刻み込む「完全内製」という選択。

マニュファクチュールとは、ムーブメントを外部から調達するのではなく、設計・製造・組立までを自社で行う“完全内製ムーブメント”を指します。
これは単なる技術的な違いではなく、そのブランドが 「どんな時計を作りたいのか」という思想を、機構そのものに刻み込める唯一の方法。
大量生産ではなく、独自構造・独自設計・独自の精度基準を持てるため、“ブランドの本気度”が最も強く表れる領域とも言えます。
Hº M’S WatchStore では、このマニュファクチュールムーブメントを採用するブランドとして VULCAIN と LIP を取り扱っています。
どちらも、自社ムーブメントを持つことで単なる復刻やデザイン時計では終わらない、“機械としての物語と誇り”を宿した腕時計を生み出し続ける存在。
マニュファクチュールとは、時計を「道具」から「作品」へと引き上げる、もっとも濃い選択肢です。
どんな時計に使われるか
機構そのものに物語性や独自性を求める、本格派・象徴的モデルに採用されます。
まとめ|ムーブメントを知ると、時計は“選ぶもの”になる
同じように見える腕時計でも、その中でどんなムーブメントが時を刻んでいるかによって、精度の安定性、使い心地、メンテナンス性、そして「付き合い方」まで変わってきます。
・とにかく安心して長く使える日本の実用王者
・スイスの“標準”として世界を支えるムーブメント
・復刻モデルに最適な進化系スイス
・クロノグラフの歴史を継ぐ名門
・そして、新しい可能性を切り拓く第3勢力
・ブランドの思想そのものを刻むマニュファクチュール
ムーブメントを知ることは、価格やデザインだけでは見えてこなかった
「その時計が、どんな人生に寄り添う道具なのか」を知ることでもあります。
最後に|ここから、ムーブメントの物語はもっと深くなる
今回は、腕時計の心臓部であるムーブメントメーカーを、国別に、その思想と立ち位置という視点からご紹介しました。
しかし、ここで触れたそれぞれのメーカーには、まだ語りきれていない歴史、技術、名機、そして物語があります。
今後 Hº M’S WatchStore 編集部では、SEIKO、MIYOTA、SELLITA、ETA をはじめ、ここでご紹介したムーブメントメーカーをひとつずつ深掘りし、「なぜこのムーブメントが選ばれているのか」「どんな時計と、どんな人に向いているのか」を、より詳しくご紹介していく予定です。
時計を“選ぶ”から、“理解して選ぶ”へ。
ムーブメントの物語は、ここからが本編です。
どうぞ、次回以降の記事もお楽しみに。
※本記事は、HºM'S" WatchStore バイヤーチームによる読みものコンテンツです。
商品に関するお問い合わせは、各商品ページまたは公式サポートよりお願いいたします。





